Unchained Melody 

- アンチェインド・メロディ-

男女比率
♂2:♀2

結衣:♀
裕一:♂
大智:♂
鈴音/紗子:♀


結衣:M「懐かしい夢を見た・・・、もう二度と会えないアナタの夢
  私が世界で一番愛した人の夢。なんでこんな夢を見たのだろう
 ・・・あぁそうか、もうじきアナタが亡くなって20年だっけ
 知らせに来て・・・くれたのかな?
 それとも、『俺の事、忘れんなよ』って言いに来たのかな?
 どちらにしても、もう二度と会えないアナタの夢を私は見た」


鈴音:「お母さーん?」

0:窓の外を見ながら呆けている母を見つける

鈴音:「なんだいるんじゃん。お母さんあのさ」

結衣:「へ?」

0:呼ばれて振り返ると母の目から一滴の涙が垂れていた

鈴音:「どうしたの?何かあった?」

結衣:「あっ・・・あぁ、鈴おかえり。
  別なにもないわよ、懐かしい夢を見ていただけ」

鈴音:「懐かしい・・・夢、どんなの?」

結衣:「えぇ~、聞いてもつまらないわよこんなの」

鈴音:「それは私が決めるの、お母さんじゃない」

結衣:「もー、この子は言い出したら聞かないんだから」

鈴音:「っで?どんな夢なの?」

結衣:「私がこの世でたった一度だけ、大恋愛した人の夢よ」

鈴音:「え、なにそれ!?お父さんよりも好きだったって事?」

結衣:「そうね。あっ!でもこの事はお父さんには内緒よ?」

鈴音:「どうしようかなぁ~」

結衣:「今月のお小遣いアップするから!」


0:手を合わせる

鈴音:「ならば許そう」

結衣:「現金な子・・・(ため息)」

鈴音:「っで、内容は?ねぇねぇ」

結衣:「なんでそんなに知りたいのよぉ~」

鈴音:「お母さんからこういう話聞いたことないもん。どんな人なの?」

結衣:「そうねぇ~」


0:思いに耽りながら過去へと時は遡る

0:間

裕一:「なぁ、アンチェインド・メロディって知ってる?」

結衣:「え?何?あんち・・・ん?」

裕一:「(笑う)アンチェインド・メロディだよ、アンチェインド」

結衣:「あー、誰だっけ・・・誰かがカバーしてたよね?」

裕一:「エルヴィス・プレスリーな。他にも色んな人がカバーしてるけど、
 俺が一番好きなのはエルヴィス・プレスリーが亡くなる前に歌ったのが
今でも頭に残ってるなぁ」

結衣:「裕一ってほんと、洋楽好きだよねぇ」

裕一:「まぁ、暇な時は大体聞いてるからなぁ」

結衣:「邦楽の方が知ってるの少ないんじゃないって程だよね」

裕一:「んなことねぇよ、知ってるぞー!ボカロにJ-POPだろー」

結衣:「それはジャンルを知ってるって事を言うんだよ、君」

裕一:「おっと、それは失礼しました」

結衣:「ほんと、洋楽好きだよねぇ」

結衣:M「彼、『間柴裕一』とは高校生の時に出会って、付き合ってもう6年になる。
 小さい頃にアメリカにいて、帰国子女っていうんだっけ?こういうの。
 そのせいもあってか洋楽好きで、学校でもよく聞いてたっけね」


裕一:「あー、そうだ、俺明日ちょっと帰ってくるの遅いから先に寝てて」

結衣:「残業?」

裕一:「ほら、決算時期だろ?何かと忙しくて」

結衣:「あー、もうそんな時期かぁ。分かった、でも限界ギリギリまで起きて待ってる」

裕一:「いや、そこまでしなくてもいいよ(笑う)」

結衣:「私が待ちたいの、ダメ?」

裕一:「ダメ・・・じゃないけど」

結衣:「けど?」

裕一:「そんな顔されると俺が困るの知っててやってるな?」

結衣:「バレた!」

裕一:「んのっ!可愛いヤツめ!」


0:抱きしめる

結衣:「ちょっと、やめてよー!もー!」

裕一:「やだね、やめない」

結衣:「もー、バカ」

裕一:「馬鹿でーす」

結衣:「そういう所だけ肯定しないのー!」

裕一:「だって俺、結衣の事好きだから」

結衣:M「これだよ、この言葉と表情。
これを言われると私は許しちゃうんだよなぁ・・・
 あー、さては・・・知っててやってるな!?」

裕一:「なに、どうした?」

結衣:「別に、そうやってさー、他の子にもやってんでしょ」

裕一:「やってないよ、結衣にだけ」

結衣:「ほんとかなー?」

裕一:「ほんとだよ」

結衣:「あやしい・・・」

裕一:「えぇ・・・、信じてないのかー?」

結衣:「信じてない訳じゃないけど」

裕一:「けど?」

結衣:「そう言う顔すれば許されると思ってるでしょ!」

裕一:「結衣は俺を信じておけばいいんだよ」

結衣:「なっ・・・!だからぁ・・・急に真面目になるのやめて(つぶやく)」

裕一:「ん~?」

結衣:「なんでもない!」

裕一:「好きだよ」

0:結衣の首元にキスをする

結衣:「もぉ・・・」

裕一:「結衣は?」

結衣:「・・・分かっててやってるでしょ」

裕一:「言葉にしてほしい」

結衣:「・・・好き」

裕一:「よく言えました!」

0:パァッと明るい表情で結衣を見る

結衣:「~~~~、そういうところぉ!!!」

0:間

0:現代へと戻る

鈴音:「お母さんって意外とさ」

結衣:「言わないで・・・」

鈴音:「やり手だよね」

結衣:「そんなんじゃないから!」

鈴音:「でもそっかぁ、お母さんにもそんな時期があったんだねぇ」

結衣:「もういいでしょ、これ以上は何もないから」

鈴音:「えぇ?もっと聞きたいなぁ」

結衣:「この子は・・・!」

鈴音:「大恋愛してた人がそれだけで終わるわけないじゃん。
ほぉ~れ、もっと聞かせろ」

結衣:「ぐぬぬぬ・・・、誰に似たんでしょうねぇ・・・」

鈴音:「こういう所はお母さん似だと思ってるよ?」

結衣:「(ため息)」

鈴音:「っで、つ・づ・き!」

結衣:「分かったわよ、そんなに前のめりにならないで」

鈴音:「やったね!ほれほれ、話しちゃいな」

0:間

0:話は過去へと遡る

裕一:「結衣、今度の週末ってさ、なんか用事ある?」

結衣:「ん~?仕事が終わったら、それ以降は何もないよー?」

裕一:「お?ほんと?」

結衣:「なんで?あー、何か企んでるなー?」

裕一:「企んではないけど。あー、ほら高校の時に一緒につるんでた紗子(さえこ)と大智(だいち)いたろ。覚えてる?」

結衣:「覚えてるも覚えてるよ、さえちゃんとは今もまだ連絡取り合ってるし」

裕一:「こっちに来る予定があるから一緒に遊ばないかって大智から誘われててさ」

結衣:「大智くん、今いるの広島だっけ?」

裕一:「そう。久しぶりに会えると思ったらさー、
嬉しくなっちゃって、行くって言っちゃったんだよね」

結衣:「事後報告ー?」

裕一:「しかも結衣も連れてく!って・・・・つい口から出てた」

結衣:「え・・・、ちょっと勝手に――」

裕一:「(遮る)ダメ・・・だった?」

結衣:「またその顔ー!!それされると断れないって言ったじゃんさー」

裕一:「来てくれるよね・・・?」

結衣:「分かった・・・分かりました。いきますぅ!」

裕一:「やった!」


0:パァッと明るい表情になる

結衣:M「なんだろう、尻尾振ってるのが見えるぞ・・・」

結衣:「あっ、じゃぁさ、さえちゃんも呼んでいい?」

裕一:「お!いいよ。高校の頃みたいに馬鹿騒ぎしようぜ」

結衣:「それはさすがに、歳を考えよ?」

裕一:「老け込んだ言い方すんなよなー」

結衣:「誰が・・・・『老けた』、ですって?」

裕一:「あっ・・・その・・・ごめんなさい」

結衣:「ちょっとそこにおすわりしなさい!!」


0:間

0:現代へと戻る

鈴音:「(笑う)、お母さんってその頃から既にだったんだ、おっかしぃ」

結衣:「そんなに笑うことないでしょー?」

鈴音:「にしても、その人は今で言う『犬系カレシ』って奴だね」

結衣:「犬系・・・カレシ?」

鈴音:「犬みたいな性格してるってこと」

結衣:「あぁ、確かに私の行動や言葉一つ一つに一喜一憂してたからそうなのかも?」

鈴音:「アタシもそんな恋愛したいわー」

結衣:「何いってんの、鈴はまだ若いんだからこれからじゃない」

鈴音:「おー?お母さんはアタシに彼氏ができてもいい派なんだ?」

結衣:「え?娘に彼氏ができるのって喜ばしいことじゃないの?」

鈴音:「お父さんは嫌がるだろうなぁ」

結衣:「鈴が決めた相手なら、お父さんも納得してくれるわよ」

鈴音:「そうかなぁ?」

結衣:「そうよぉ。あっ、でも、ろくでもない人だけはやめてよー?」

鈴音:「ろくでもないって、例えば?」

結衣:「そうねぇ・・・」

0:再度過去へと遡る

0:間

大智:「確か待ち合わせはここであってる・・・はずだよなぁ?」

0:ぼやいているとタイミングよく裕一が到着する

裕一:「おっす、大智」

大智:「よっ。あれ?結衣ちゃんは一緒じゃないのか?」

裕一:「まだメイク終わってないーって言うから、先に俺だけね。
大智を待たせるのも悪い気がしてさ」

大智:「一緒にきてあげればよかったのに」

裕一:「それによ、『あの話の続き』も言っておきたかったしよ」

大智:「あぁ・・・、っていうか、ほんとに決行するのかそれ?考え直したりとかは」

裕一:「しない、どんな結果に転ぼうともな」

大智:「お前はいいのかよそれで」

裕一:「俺は――」

紗子:「(話に割って入る)あっれぇ、野郎二人で何こそこそしてんのかなぁ?」

裕一:「おっわ、紗子!?」

大智:「さえちゃん、おっす」

紗子:「久しぶりだねぇ、大智。長旅ご苦労」

大智:「いやぁ、飛行機できたって言ってもケツがいてぇ」

紗子:「え?何?ようやくケツ割れた?」

裕一:「いや、ケツは元々割れてっから」

紗子:「なぁんだぁ、割れてないのかぁ。ってあれ?結衣は?」

裕一:「そろそろ来るんじゃねぇかな?」

紗子:「なぁんで一緒にきてあげなかったのよ、一緒に住んでんでしょ?」

裕一:「先行ってもいい許可はもらってるからいいんですぅ」

紗子:「あぁそうですかぁ、この薄情者ー!」

裕一:「それに、紗子にも知っておいてもらいたい事があるからさ」

紗子:「え?何急に真面目になって。
やめてよー?『俺、そろそろ死ぬから』っていうハプニング」

大智:「・・・・・・」

裕一:「・・・・・・」

紗子:「え・・・、ちょっとまってよ、マジの話?これ?どっきりじゃなくて?」

裕一:「脳に腫瘍が見つかってさ、
医者が言うには手術しても成功確率は10%にも満たないらしくてな」

紗子:「なにそれ・・・、冗談でしょ?」

大智:「冗談でこんな事言えないでしょ」

紗子:「それって結衣は知ってんの・・・?」

裕一:「(首を横に振る)」

紗子:「アタシ達に先にいうよりまずは結衣に言うべきでしょ!?」

裕一:「何度も言おうと思った、でも結衣の顔見てたら言えなくてさ」

紗子:「大智はこの事、いつから知ってんの・・・?」

大智:「半年くらい、前かな。ユウから相談に乗ってほしいって言われてそれで知った」

紗子:「えぇ・・・こんな事知ってアタシ・・・」

裕一:「結衣には黙っててほしいんだ」

紗子:「アタシ言ったよね、結衣を泣かせようものなら――」

裕一:「(遮る)だから俺から別れを切り出そうと思ってる」

紗子:「ユウ・・・アンタ・・・」


0:裕一の顔を引っ叩こうする手を止める

裕一:「結衣は知らないままの方がいいんだ」

紗子:「そんなの――」

大智:「(割って入る)良くないって言ったんだけどねぇ・・・・
一度こうだって言い出したら聞かなくてさ」

紗子:「アタシは反対だからね。結衣だって知る権利があるわよ、この事」

大智:「僕もそうだった。でも多分結衣ちゃんは受け入れられない。
ユウが死ぬだなんてこと。だから別れを切り出した後、
僕が結衣ちゃんのケアをしようと思う」

紗子:「何言ってるの・・・!?大智もおかしいよ!
アンタ達最低な事をしようとしてるの分かってる?」

裕一:「分かってる。でもこれが最善の選択だと思ってる」

紗子:「道は他にもあるでしょ」

裕一:「ないんだ・・・。」

紗子:「なんで・・・!」

裕一:「もう時間は残されてないから」

紗子:「だから大智がこっちに戻ってきたって訳・・・?」

大智:「それもある」

紗子:「もってどういうことよ」

大智:「ユウと話してたら、皆の事懐かしくなっちゃってさ、転勤願い出しちゃった」

紗子:「な・・・によ、それ。・・・アタシ帰る、
こんな気持ちで一緒になんていられ――」

結衣:「遅れてごめんねぇ~」

紗子:「結衣ー!」

0:抱きしめに行く

結衣:「えぇ~、何どうしたの?」

裕一:「・・・・・・天使か」

大智:「は?」(※できれば同時に)

紗子:「は?」(※できれば同時に)

結衣:「は?」(※出来れば同時に)

裕一:「わぁ、皆からの冷たい視線が痛い」

大智:「何馬鹿な事言ってんだ、結衣ちゃんはいつだって可愛い」

結衣:「ちょっ・・・大智くんまで!やめてよぉ」

裕一:「さぁ姫、お手をどうぞ」

結衣:「だから、歳を考えてってば!もうそんな歳じゃないんだから!?」

紗子:M「若ければいいんだ」(※出来れば同時に)

大智:M「若ければいいんだ」(※出来れば同時に)

紗子:「ユウ、ちょっと」

裕一:「あ?なんだ」


0:二人から少し離れる

紗子:「結衣を最後にこさせたのは、アタシを帰らさない為だね・・・?(小声)」

裕一:「あっ、バレました?(小声)」

紗子:「だぁぁぁ~~~~、この性悪っ!!」

0:足を思いっきり踏んづける

裕一:「いってぇぇぇぇ!!!」

0:間

0:現代へと戻る

結衣:「死ぬのを分かってて、蚊帳の外にする人?」

鈴音:「え、なにそれ・・・どういう事?」

結衣:「まぁその後のほうがもっと酷かったんだけどね(呟く)」

鈴音:「お母さん?」

結衣:「ん?あぁ、なんでもないのよ」

鈴音:「でもそっかぁ」

結衣:「なにぃ?」

鈴音:「お母さんってバカップルだったんだねって思って」

結衣:「バカ・・・プ、ってそんなでもないわよぉ」

鈴音:「でー?それからどうなったの?あっ、もしかして今のお父さんが!」

結衣:「違うわよ。さっきも言ったでしょ、お父さんより好きな人だって」

鈴音:「そうだった・・・」

結衣:「残念でした」

鈴音:「えー、じゃぁその人とはどうなったのよぉ」

結衣:「それはね・・・・・・・」


0:間

0:過去へと遡る

紗子:「はー、なんか久しぶりに遊んだなぁ」

大智:「さえちゃんはいつも遊んでるイメージあったけど」

紗子:「アタシをなんだと思ってるのよ」

裕一:「ギャル」

紗子:「ユウ、あんたねぇ!」

大智:「初対面の時は確かにそうだったよね」

裕一:「それなー!なのによー、正反対な結衣が友達なんだもんな。
あれには正直驚いたわ」

紗子:「べっ・・・別にいいでしょ!」

大智:「『アタシの友達を紹介してやる』って言って、
どんなギャルがでてくるのかと思ったらそれとは真逆だったのは予想外だったよねぇ」

結衣:「私もギャルメイクしとけばよかったかな?」

紗子:「だめだめ、結衣はそのままでいいの。ずーっとそのままでいいよ」

大智:「まぁそんなだからユウは――」

裕一:「(遮る)話をぶった斬るけどさ、結衣」

結衣:「え?何?どしたの?急に真面目な顔して」

裕一:「俺と別れてほしい」

結衣:「え・・・?」

紗子:「・・・・・・・」

大智:「・・・・・・・」

裕一:「今日を最後に、結衣とは別れようって思ってたんだ」

結衣:「え?なんかのドッキリ?」

裕一:「ドッキリなんかじゃねぇよ、マジの大マジ」

結衣:「なんで?なんで急にそうなったの・・・?」

裕一:「急にでもねぇよ。前々から言おうとはしてたんだ」

結衣:「大智くんとさえちゃんはこの事・・・知ってたの・・・?」

大智:「僕は何度か相談されてた」

紗子:「アタシは、今日あった時に・・・」

結衣:「知らなかったのは・・・私だけ?
え・・・なにそれ・・・じゃぁ今までのはなんだったの・・・?」

裕一:「楽しい思い出を俺に作ってくれてありがとう」

結衣:「待ってよ、納得いかない!ちゃんと説明してよ!」

裕一:「・・・・お前、重いんだよ」

大智:「ユウ・・・!」

裕一:「お前がいなきゃ、この先生きていけないなんて考えてるなら大間違いだかんな
 結衣にとってそりゃ俺はいい彼氏って言うステータスなんだろうけどさ、
 俺にとってはただの重りでしかないの・・・」

結衣:「そんな・・・そんな事思ってなんかない・・・」

裕一:「だからさ、そろそろ俺を解放してくれ」

結衣:「解放って・・・私縛ることなんか一度も――」

裕一:「(突き放すように)お前がいなきゃ俺は自由になれるんだよ!」

結衣:「私・・・」

裕一:「悲劇のヒロイン気取るのはもうやめろよ」

結衣:「そんなつもりない!」

裕一:「はー・・・だる、俺帰るわ」

0:踵を返して歩き出そうとする

結衣:「ちょっと待ってよ!」

裕一:「あ?何、まだなんかあんの?
・・・あぁ、部屋の荷物の事か、結衣が居ない時に取りに行くよ。
それか、結衣が捨てといて」

結衣:「私、納得できない!」

裕一:「俺が納得できてんの、だからもういいだろ。じゃぁな」


0:歩きだしていってしまう

結衣:「待って!・・・ってば・・・」

紗子:「大智、アンタはユウを追いかけて。アタシは結衣の側にいるから」

大智:「あっ・・・あぁ・・・」


0:裕一を追いかけに走り去る

結衣:「なんで・・・どうして・・・?」

紗子:「結衣・・・大丈夫?」

結衣:「大丈夫・・・?さえちゃんにはこれが大丈夫に見えるの?」

紗子:「まぁそうか、一方的に別れを切り出されて大丈夫な訳ないよね・・・」

結衣:「なんでこうなっちゃったの・・・、
私・・・裕一の重りにしかなれてなかったって事・・・?」

紗子:「重りなんてなってないと思うよ」

結衣:「でもさっき重いって・・・」

紗子:「あいつも大分思い詰めてたみたいでさ」

結衣:「何を・・・?私のこと?」

紗子:「それは・・・・・・・違う。絶対に違う」

結衣:「じゃぁ何を思い詰めてたの!?」

紗子:「それは・・・・・」


0:間

0:裕一に追いつく大智

大智:「ユウ!」

裕一:「大智・・・・」

大智:「やっぱりこんなの良くないよ」

裕一:「結衣は・・・、結衣はあれで俺のこと忘れてくれるかな」

大智:「お前は忘れてほしいのかよ・・・?」

裕一:「そんな事あるわけねぇだろ!!・・・俺の・・・、
俺が世界で一番愛してる女なんだぞ」


大智:「だったら今からでも――」

裕一:「(遮る)無理だ、今更結衣になんて言えばいい。
さっきのはドッキリでしたって?その後に、俺はもうじき死ぬって?
 それこそ余計にあいつを混乱させるだけだ・・・」

大智:「素直に話せば結衣ちゃんだって分かってくれるだろ、
もう学生じゃないんだし僕ら」

裕一:「迷惑・・・かけたくねぇんだよ。奇跡的に手術が成功したとしても、
 動くこともできなくなる、言葉だって話せなくなるかも知れない奴を愛せって、
そんな事・・・俺はしてほしくない」

大智:「だからって結衣ちゃんの気持ちを無視するのはやっぱり・・・・」

裕一:「前にも話しただろ。大智だって納得してくれてたじゃねぇか」

大智:「その時はね、でも結衣ちゃんのあんな顔見ちゃったらさ・・・」

裕一:「その為の心のケアだろ・・・?だからお前に結衣を託すんだよ」

大智:「恨まれるよ、絶対に」

裕一:「そうかもしれない、でも俺と一緒になるくらいならそれでもいい。
その方がましだ」

大智:「荷が重いなぁ・・・、何で引き受けちゃったんだろ・・・」

裕一:「俺の親友、だからだろ」

大智:「(ため息)僕も絶対に恨まれるだろうなぁ・・・。
っていうかさ、結衣ちゃんが僕を拒否したらどうするのさ」

裕一:「あっ・・・、そこまで頭回ってなかった。
でも結衣なら絶対分かってくれるって思ってるわ俺」

大智:「何その結衣ちゃんに対しての信頼感。ユウはいつも詰めが甘いんだよ。
 結衣ちゃんに本当の事を教えろって言われたら僕、ゲロっちゃうからね」

裕一:「その時は、まぁ・・・しょうがねぇよな」

大智:「その時は素直に怒られてね」

裕一:「生きてたら、な」

大智:「今からでもゲロってきちゃうかなぁ・・・」

裕一:「何のためにここまでしてきたのか分からなくなるから今はやめろ!」

大智:「えー・・・」

裕一:「頼むよ!」

大智:「(ため息)、分かったよ」

裕一:「あっ・・・、あんなに大見得を切って言ったのはいいんだけど、住む所ねぇや」

大智:「だろうなとは思ったから、僕の家に当分いればいいよ。
今は会いにくいでしょ、結衣ちゃんに」

裕一:「・・・まぁな」

大智:「ほんと、詰めが甘いよね、君は・・・」

0:間

0:現代へと戻る

鈴音:「ちょっと待って、お母さん振られたの!?」

結衣:「そう・・・、その時はほんとにショック過ぎて
何も喉を通らなかったわぁ・・・」

鈴音:「その時は?」

結衣:「理由は後からちゃんと分かって、あぁそうだったんだって納得したのよ」

鈴音:「その理由はなんだったの?」

結衣:「それは――」

鈴音:「(遮る)あっ、待って言わないで!自分で当てる!」

結衣:「ふふっ、ならいわなぁ~い」

鈴音:「ずっと付き合ってたのにいきなり振った理由かぁ、うぅ~ん」

結衣:「そんなに難しく考えなくてもいいのよ」

鈴音:「もしかしたらその人がお父さんだったって事もありえたんだよねぇ」

結衣:「・・・まぁ、そうねぇ」

鈴音:「でもならなかった・・・、遠くへ行っちゃった、とか?」

結衣:「遠くかぁ、確かに遠くだなぁ」

鈴音:「あっ、分かった!」

0:間

0:過去へ遡る

0:病室の扉を開ける

結衣:「裕一、久しぶり」

裕一:「結衣・・・、なんで・・・!」

結衣:「大智くんから聞いた」

裕一:「大智が・・・?」

結衣:「聞いたっていうか、聞き出したって言ったほうが正しいかもね」

裕一:「・・・・・」

結衣:「あの時言われたのがどうしても納得できなくてずっと悩んでた」

裕一:「謝ってほしくてきたのか?」

結衣:「違う、そんなんじゃない」

裕一:「だったらなんだよ」

結衣:「本当の事を言ってほしいの」

裕一:「は?」

結衣:「そんな、嫌いになったフリするのもうやめて」

裕一:「フリなんてしてな――」

結衣:「(遮る)さえちゃんからも大智くんからも、その事を聞いたの!」

裕一:「あの二人・・・内緒にしとけって言ったのに・・・」

結衣:「なんでそんな重要な事黙ってたのよ!」

裕一:「・・・結衣に、お前にこんなカッコ悪い所見られたくなかったからだよ」

結衣:「なにそれ・・・そんな事の為に私を突き放したの?」

裕一:「お前のまえではかっこいい俺でありたかったの!」

結衣:「どんな姿でもかっこいいじゃん裕一は!」

裕一:「結衣・・・」

結衣:「もっと私に迷惑かけてよ、なんで私から逃げようとするのよ」

裕一:「逃げようとなんてしてない」

結衣:「したじゃない!」

裕一:「あれは、俺の思いを大智に託したくて」

結衣:「そんなの・・・やめてよ・・・」

裕一:「大智が結衣の事好きなの、ずっと知ってたから・・・
だったら託すのもありかなって、
 俺・・・お前の前から消えちゃうんだぞ」

結衣:「私がそれを拒んだらどうしてたのよ・・・」

裕一:「大智にもそれ言われた、でも結衣は分かってくれるって思ってたから」

結衣:「言わないとわからないじゃない」

裕一:「・・・そうだな、確かにそうだ。ごめん、結衣」

結衣:「裕一の本当の気持ち、教えて・・・」

裕一:「・・・・・・・・」

結衣:「お願い」


裕一:「・・・・・・、結衣の事愛してる。ずっとずっと、これから先も愛してる。
 でも俺、死ぬって・・・助かる確率が10%未満だって、
 俺がいなくなって残される結衣の事考えたら、そんなの耐えられなくなった・・・
 だから大智に相談した・・・結衣を任せてもいいって思えるのが大智だけだったから
 最初はあんな温厚な大智がキレるくらい怒られたよ。当たり前なんだろうけど、
 それでも最終的には分かってもらえたんだ。
 本当は俺の手で結衣を幸せにしたいよ!それは今でも変わらない。
 でも、奇跡的に助かっても、今まで通りには過ごすことはできないだろうって
言われてそんな俺を見せるくらいなら、死んだほうがましだって思ってる・・・
 だからあの夜、もう二度と会わないつもりで・・・結衣を傷つけるのをわかった上で
 俺を忘れてほしかったんだ・・・」


結衣:「・・・バカだよ、裕一は」

裕一:「・・・・・・」

結衣:「初めからそう言ってくれたら、納得できたのに。
 遠回しに突き放すような事して、ほんとバカ・・・
 だから時間かかっちゃったじゃない・・・」

裕一:「ごめん・・・」

結衣:「そっか・・・そっかぁ、嫌いになった訳じゃないんだぁ」

裕一:「嫌いになんてなる訳ないだろ!?」

結衣:「裕一の気持ちはよくわかった。でも私の気持ちを無視するのだけは許さない。
 ・・・・だけど、裕一がそこまでして幸せにしたいって気持ちを無碍にするのも嫌」


裕一:「だから――」

結衣:「(遮る)だから、裕一が悔やむくらい私、幸せになってやる」

裕一:「・・・・結衣」

結衣:「アナタの気持ちを汲んであげる」

裕一:「・・・ありがとう」

結衣:「あげるんだからね!理解のできる女だと思いなさいよ?」

裕一:「あぁ、分かってる」

結衣:「だけど、今は・・・今だけは、もう一度アナタの恋人でいさせてください」

裕一:「愛してる、結衣」


0:お互いに唇を重ねる

0:間

0:現代へと戻る

結衣:「それから彼は、手術をして奇跡的に助かったんだけど、
その2ヶ月後に亡くなったの」

鈴音:「(泣いている)」

結衣:「これが私がしてきた大恋愛よ」

鈴音:「(涙を拭きながら)じゃぁ、お母さんが結婚した人って」

結衣:「そう、アナタのお父さんは――」

大智:「(会話に割って入る)ただいまー。
ん?珍しいな、二人揃ってって、なんで鈴は泣いてるの!?」

結衣:「さぁ、なんででしょう?」

大智:「えー、なになに?泣ける話でもしたのかー?」

鈴音:「お父さん、良かったねぇ」

大智:「なんだよそれ、何が良かったんだよぉ?」

結衣:「さって、大智くんも帰ってきた事だし、何か作りましょうかね」

大智:「あぁ!逃げる気だなぁ?」


結衣:「そんな事ありませんー」

大智:「気になるなぁ。あっ、そうだ結衣」

結衣:「ん~?」

大智:「今度、ユウのお墓参り行こうかってさえちゃんと話してたんだけどさ、
一緒に行く?」

結衣:「うん、行く」

鈴音:「それアタシも参加したい!」

大智:「鈴も?なんでー?」

鈴音:「ちょっと訳ありでね」

大智:「なんだそりゃ。まぁ、人が多いほうがあいつは喜ぶだろうから、よしとするか」

結衣:「そんな緩い感じでいいんだ」

大智:「それに、そろそろ娘を紹介しておかないと怒られそうだからな」

結衣:「確かに?」

鈴音:「あっ、そうだ。お母さんの言ってた曲ってこれだよね?」


0:Unchained Melodyが流れ始める

結衣:「・・・そう、これ」

大智:「ユウが好きだった曲だな」

結衣:「うん」

大智:「あっ、なるほど。ユウの話をしてたのか」

鈴音:「お母さんって意外とやり手だってことが分かった」

結衣:「そんなんじゃないってば」

大智:「結衣」

結衣:「ん~?」

大智:「ずっと聞けないでいたことがあったんだが、聞いてもいいかい?」

結衣:「うん」

大智:「ユウの事、恨んでるか?」

結衣:「え・・・?」

大智:「まだ恨んでるなら恨まないでやってくれ」

結衣:「元より、恨んでなんかないよ」

大智:「本当か?」

結衣:「本当。っていうか、恨む理由がないじゃない」

大智:「ユウがあんな事して、結衣には他に選択肢だってあったはずなのに」

結衣:「それはもう、裕一には言ってあるの」

大智:「え・・・?」

結衣:「絶対幸せになってやるって。だから私、今、幸せよ」

大智:「結衣・・・ありがとう」

結衣:M「私が世界で一番愛した人。もう二度とは会えないけれど、
それでも心の底から愛した人。
 そんな懐かしい夢を見た。きっと『忘れないでくれ』と言いに来たのだろう。
 私はいつまでも忘れないよ、アナタの大好きだった思い出の曲と共に
いつまでもアナタを思い出すから」


0:Unchained Melody -アンチェインド・メロディ- 幕